コンパクトに、スムーズに出し入れできること

製作時に大切にしたのは、「コンパクトなサイズ感」そして「お札・小銭・カードの出し入れがスムーズである」ということ。

しかし財布はひとりひとり使い方も違えば、使い心地に対する感じ方もさまざま。

1人の感覚に頼るのではなく、皆で意見を出し合い「誰にとってもコンパクトでスムーズに出し入れできる」デザインにする必要がありました。

何度も重ねた企画会議とサンプル製作

コンセプトを形にするため、Munekawaでは週に1回、新作会議を行っています。

そこで新作の形や構造について意見を出し合います。

会議で話し合ったことを参考に製作したサンプルは、全員が交代で実際に使ってみます。

そして気になったことをまた会議で共有し、それを参考に新たなサンプルを製作します。

こうして、スタッフ全員の感覚をすり合わせながらデザインを進めていきます。

これを繰り返し、最終的な形が決まるまでの期間は実に1年と数ヶ月。

企画・デザイン・製作をすべて少人数で行っているため、新作を作るのにはどうしても時間がかかってしまいます。

しかし少人数だからこそ、全員の意見や気づきをしっかり反映したもの作りができることは、Munekawaの強みの一つと言えるかもしれません。

「コンパクト」と「収納力」の両立に立ちはだかる壁

製作がスムーズにいかず悩んだ時もありました。

特に苦労したのが、「カードポケットと小銭入れ部分の位置」です。

ある程度の量を入れられて、かつ取り出しやすい小銭入れには、それなりのスペースが必要となります。

また、カードも取り出しやすく、たくさん収納できるようにするために差し込み口を設けなくてはなりません。

しかし「コンパクトなサイズ感」であることがこうしたスペースを作ることのハードルとなってしまったのです。

試行錯誤を繰り返したからこそ生まれたアイデア

そんな時に、ふいに生まれたのが「マチのパーツを大きくして、そこにカードポケットを付ける」という案です。こうすることで、小銭入れも大きく口が開き取り出しやすい構造にすることができました。

解決策を閃くのは一瞬のことですが、それまでにたくさんの試行錯誤を繰り返さなければ、こうしたアイデアは生まれません。

アイデアを形にするためのブラッシュアップ

Cram Longの完成までに、本当にたくさんのサンプルを製作しました。

良いアイデアが思い浮かんだと思っても、実際に形にしてみると思う様にいかないケースがほとんど。

しかし、この「上手くいかない」という経験がもの作りにはとても大切です。

上手くいかない部分をひとつひとつ解決し、ブラッシュアップすることで、少しずつアイデアが形になっていきます。

形がきまってからも、革のパーツの厚みや長さに0.1mm単位で微調整を繰り返します。

こうした微調整を繰り返すことで、「ちょうど良いサイズ感」「スムーズな使い心地」を実現させていきました。

「独自の構造をつき詰め完成したL字ファスナー長財布 Cram Long。

試作を重ね、意見を出し合い、長い時間をかけてMunekawaスタッフ全員の、アイデア、気づき、技術が活きた形を作る事ができました。

Cram Longを通して、Munekawaが大切にしたことを実感していただけると思います。

これからも、長く楽しめる「革」という素材の良さを存分に活かした、長く使っていただけるもの作りを大切にしていきたいと考えています。